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朝、社会人になった。

 

昨夜はあまり寝付けず、半ば興奮状態をひきづったまま無理やり眠りにつくような夜だった。眠りにつき、少しの休息をとって、目覚めた朝は気怠かったが、いささか前向きに、これから続く平日の早朝を嫌がることなく、自分から温かく迎え入れるような気持ちになった。

 

そんな気持ちに浸っている余裕もなく、1日が始まる。呑気にシャワーに入る時間もない。しかも、社員寮の前で有志が集合して出発するというので、遅刻防止も兼ねて急がねばならない。簡単に整髪し、荷物の確認を済ませたら、さっと着替えて、寮の外に飛び出した。

 

寮から三鷹台へと歩き出す。天気が良い、空が青々としている。新しい靴がきゅと、音を出すたびに新入生のような初々しい気持ちと、少しの恥ずかしさみたいなものが生じる。

吉祥寺に向かう、三鷹台発の京王井の頭線は、その間わずか三分二駅だが、ゆっくりと時が流れている。朝特有の満員電車のぎゅうぎゅう詰めほどは混んでなくて、人との距離に空間がしっかりとある。客層も社会人がわんさかいる印象は感じなかった。(本当はたくさんいたのかもしれないが)

 

吉祥寺につき、神田目指して中央線に乗る。

これが絶望的だった。

4年間東京にいても体験したことのない満員電車。中野〜新宿間では、足が両方つけなかった。自分のポゼッションが悪かったのもあるのだけれど、キッツぅと思いながら30分耐えた。この日はこのイベントが一番こたえた。

午前は入社式で、社長から直々に辞令をもらった。有名な方なので、すごく緊張した。しかし、実物はテレビで見るよりもちっちゃな人だったし、スピーチも噛み噛みだったので可愛らしく思えた。

 

昼は、入社式と設立記念日にのみ振る舞われるエビフライを食べた。かなり肉厚のエビでびっくりした。豪華な食事といえば、エビフライ、というのが時代性を感じる。現代の豪華な食事というのを考えた時に、真っ先にエビフライは出てこないなぁと大きく口を開けながら考えていた。同時に三浦哲郎の盆土産を思い出し、勝手ながら、当時の少年とお父さんに心を馳せていた。

 

午後から研修だったが、大したことはなく1日が終わった。

強いていうなら、僕自身の不器用さに辟易した。印鑑が上手に押せない。何回も間違えてしまって情けなかった。印鑑の「中川」の文字も、見ようによってはいささかか細く見えた。

 

...研修が終われば、いよいよ部署に配属される。

 

珍しく胸いっぱいに希望を膨らませている、そういう自分をいつまでも持ち合わせていたい。